Research
私たちは、「生物」と「環境」の相互作用を理解するために、「光合成生物」と「光」の相互作用に着目し研究を進めています。光は、その光質、強度、照射場所、照射時間の4つの因子で厳密に定義し、かつ、制御することができます。また、光合成生物は光をエネルギーとしているが故に、光を最重要な情報としても認識し、高度な光応答機構を備えています。これらのことから、「光合成生物」と「光」の相互作用に着目することで、詳細な分子機構を理解することができると期待しています。また、最近では、私たちが発見した光受容体やその制御系を利用した応用研究にも取り組んでいます。私たちの研究室では知識を基盤とした仮説の着想と実験による検証という二つのプロセス両方を重視して研究を推進しています。
Project 1. シアノバクテリアの光応答戦略解明
1. これまでの研究の発展的継続: シアノバクテリアは多くの光受容体を持ち、中でも、シアノバクテリオクロムと呼ばれる光受容体が豊富に存在します。シアノバクテリオクロムは開環テトラピロールを結合し、2つの光吸収型の間を光変換します。これまで、私たちは新規の分光特性を持つシアノバクテリオクロムを数多く同定し、その機能を分子レベルから細胞レベルまで解析してきました。今後も、それらのシアノバクテリオクロムの解析を推進します。
2. 新規のシアノバクテリオクロムの探索: これまでの研究で、シアノバクテリオクロムの色調節機構、構造などについて、詳細な理解が得られています。そこで、これらの知見を基に、配列比較や生理・生態学的特徴から新たなシアノバクテリオクロムの探索を行っています。
3. シアノバクテリオクロムが制御する光応答現象の探索: ゲノム解析が進んでいるものの、その生理学的・遺伝学的解析が進んでいない種が多くあります。それらの種のシアノバクテリオクロムの生化学・分光学的解析を進めつつ、それらのシアノバクテリオクロムが制御する光応答現象を探索します。
Project 2. シアノバクテリオクロムの応用利用
私たちがこれまで解析してきたシアノバクテリオクロムは、その色素結合領域がGAFドメインという非常に小さなタンパク質ドメイン(25 kDa程度)で構成されています。また、2つの光吸収型の間を可逆的に変換しますが、光変換を繰り返し安定して行うことができます。さらに、2つの光吸収型は量子収率は低いものの、蛍光を発することも分かっています。これらの性質から、シアノバクテリオクロムのGAFドメインを、光で細胞を制御するオプトジェネティクスに資する光スイッチや細胞内の分子動態を可視化するための蛍光分子イメージングに資する蛍光プローブとして開発することが可能であると考えています。現在は、新規のGAFドメインを探索したり、既知のGAFドメインに変異を導入したりすることで、より利用価値の高いGAFドメインの発見・開発を目指して研究を進めています。