Scientific Reports誌に論文が掲載されました
Narikawa et al. (2015) Scientific Reports, 5: 7950
ビリベルジンという色素を結合するシアノバクテリオクロムを発見し、その成果がScientific Reports誌に掲載されました。オープンアクセス誌ですので、興味のある方は論文をお読みください。
静岡大学とJSTが共同でプレスリリースも出しています。
http://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=2316 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150122-2/index.html
シアノバクテリオクロムは、シアノバクテリアに存在する多様な光センサーの総称です。先行研究にて、シアノバクテリオクロムは、フィコシアノビリンやフィコビオロビリンという比較的短波長の光を吸収する色素を結合することが知られていましたが、長波長の光を吸収するビリベルジンの結合は全く報告がありませんでした。私たちは、光合成反応中心色素が通常の植物やシアノバクテリオクロムよりも長波長の色素になっているユニークなシアノバクテリア・アカリオクロリスであれば、長波長の光を感知するために、ビリベルジンを結合するシアノバクテリオクロムが存在するのではないかと考え、研究を進めました。その結果、実際に、ビリベルジンを高効率で結合して遠赤色光と橙色光の間で光変換するシアノバクテリオクロムを見つけることができました。しかも、遠赤色光吸収型が、微弱ながら蛍光を発することも見いだしました。遠赤色光は、動物細胞において、組織の奥深くまで浸透する光ですので、このタンパク質を土台として開発を進めることで、将来的には、動物の個体レベルでの細胞制御システム・蛍光プローブによる分子動態可視化などにも適用できると期待しています。
2013年に掲載されたPNAS論文のリバイスのために行った実験で、予想外の結果が得られ、そこから発展した研究です。こちらも東京大学時代に行った実験がメインですが、やはり、静岡大学で行った実験も含まれます。また、2013年の5月から共同研究を始めた、東大駒場の佐藤守俊先生のグループとの共著論文第一報目となります。
この論文は査読過程で、査読者一人から"marvelous discovery"、"congratulate the authors in their acumen"、"a significant breakthrough whose far-reaching relevance and importance can hardly be overstated"といった言葉でもって、とても高い評価をいただけました。査読は、基本的にその分野の専門家が行うので、その人に評価されたというのは、やはりとても嬉しいですね。ただし、今回の成果はまだまだ最初の一歩ですので、これを出発点として、さらにオリジナルな研究を進めていけるよう、頑張ります。